プライベートエクイティファンドの特徴とメリット・デメリット

ファンド投資

2019-1-24

ソフトバンクグループが運営する「ビジョン・ファンド」の登場により、一躍注目を集めているプライベーエクイティ(PE)・ファンド。

この記事では、プライベートエクイティ・ファンドの特徴と、メリット・デメリットについて解説していきます。

1、プライベートエクイティ(PE)とは

(1)代替的投資(オルタナティブ投資)手法のひとつ

個人投資家にとって一般的な、証券会社を介した株や債券などの売買を伝統的投資というのに対し、プライベートエクイティ(以下、PE)は、株式市場に上場していない非公開(未上場)企業の株、あるいはそれらの企業への投資(PE投資)のことをいいます。

 

PE投資は、主に年金基金や金融機関などの、いわゆる機関投資家を中心に行われている投資であり、代替的投資(オルタナティブ投資)いわれるもののひとつです。

非上場(未公開)企業への投資の総称ですが、投資対象となる企業のステージによって、大きく4つのタイプに分かれます。

(2)PE投資のタイプ

タイプ

投資対象
ステージ

ベンチャーキャピタル
(VC)
創業〜成長期 企業・事業の将来性や成長性を見込んで投資。IPOやM&Aなどによりエグジットに成功すれば、投資資金の数十倍から数百倍リターンが得られる。一方で、IPOなどに至らないケースも多く、ハイリスク・ハイリターンの投資となる。

VCは投資事業のステージによって、さらにシーズ、スタートアップ、アーリーステージ、レイトステージなどに細かく分類される。

バイアウト投資 成長〜成熟期 事業が軌道に乗り、一定のキャッシュフローを生み出している企業に投資。出資によって経営に関与し、企業価値を高めた上で株を売却しリターンを得る。
企業再生投資 衰退期 成長に陰りが見え始めた企業に投資。不採算部門や人員整理などの指揮をとり、経営の立て直しを図ることで企業価値を向上させ、最終的に売却しリターンを得る。
ディストレス投資 破綻後 経営破綻した企業の債券などを債権者から額面より安く買い取り、破綻企業の保有する資産から債券回収を図るなどしてリターンを得る。その手法から「ハゲタカ」などとも呼ばれることもある。

 

2、PEファンドのメリット

 

(1)PEファンドメリット1:資金提供だけにとどまらない経営への積極的な関与

一般的な上場株式への投資は、株の購入を通じて企業に資金を提供し、企業の成長するのを待ち、その恩恵を期待するものです。

それに対してPEファンドでは、資金を提供するだけでなく、経営陣に対して助言を行うなどの方法で経営に直接関与し、自らの手で企業価値向上させていくという特徴があります。

(2)PEファンドメリット2:オルタナティブ投資による資産分散効果

PEファンドへの投資によって、一般的な債券や株式といった伝統的資産とは異なる、非公開株という新たなアセットクラスが投資対象に加わり、資産分散効果が期待できます。

(3)PEファンドメリット3:上場株式への投資を上回る高い投資リターン

PEファンドの投資対象は、伸び代の期待できる非上場(未公開)企業であり、企業価値の高まった投資先企業が上場に至れば、莫大な利益が期待できます。

たとえばソフトバンクグループの孫正義社長は、2000年に当時Eコマースベンチャーであったアリババに対し出資を行いました。急成長を遂げたアリババは、2014年ニューヨーク証券取引所へ上場。初値での時価総額は2300億ドル(1ドル110円換算で約25.3兆円)をつけ、ソフトバンクグループの時価総額を一気に抜き去りました。

 

孫社長が保有するアリババ株の評価額は約500億ドル(同5.5兆円)まで膨らみ、出資した2000万ドル(同22億円)は、14年間で実に250,000%のリターンをもたらしました。

3、PEファンドのデメリット

 

(1)PEファンドデメリット1:換金性や流動性が低い

市場で自由に売買できる上場株式に対して、PEは売買(譲渡)に制約があることが多く、換金性や流動性が低いというリスクがあります。

(2)PEファンドデメリット2:不確実性の高いハイリスク・ハイリターンな投資

PE投資では、創業間もないベンチャー企業や経営不振に陥った企業などの企業価値を向上させ、上場、売却することによりリターンを狙います。

企業価値の向上に成功すれば莫大なリターンが期待できる一方、ベンチャー企業が成功するか、経営不振企業を再生できるか、いつ頃リターンが得られるのか不確実性も高く、ハイリスク・ハイリターンな投資となります。

(3)PEファンドデメリット3:短期的なリターン確保は難しい

ベンチャー事業の育成や企業再生には通常長い期間を要し、短期間でのリターンは期待できません。

一方で長期的にみれば莫大なリターンも期待できるのがPE投資の魅力でもあります。

(4)PEファンドデメリット4:個人での直接投資は難しい

PEは多額の資金が必要なハイリスク・ハイリターンな投資先であり、取引の中心は機関投資家です。個人でPEに直接投資できるのは、投資先企業と親密な関係がある人や、ごく一部の富裕層などに限られており、一般の個人投資家にはなかなか投資機会がありません。

 

個人投資家がPE投資を行うには、PEへ直接投資するのではなく、PEファンドやPEを投資対象する投資信託を利用するのが一般的な方法となります。

(5)PEファンドデメリット5:手腕が問われる

PEファンドを介してPE投資を行う場合には、ファンドの選択が運用成果を大きく左右します。

特にPE投資では、企業に出資するだけでなく、積極的に投資先企業の経営に関与して企業向上・企業再生を図っていくことになります。

 

そのためPEファンドには、通常の投資ファンドに求められる投資先を見極める能力に加え、企業価値向上や企業再生のための専門的な知識と能力が求められます。

4、国内企業へ投資実績のある主なPEファンド

 

PE投資の歴史が長い米国や欧州諸国を中心に、多くのPEファンドが活動していますが、ここでは国内企業へ投資実績のある主なPEファンドについて、実際の投資事例とともにご紹介します。

(1)Carlyle(カーライル)投資事例1:株式会社ソラスト

カーライル・グループは、339のファンドを通じて、2120億ドル以上の運用資産を保有するグローバルなオルタナティブ(代替)投資会社です。

ワシントンD.C.で1987年に設立以降、北米、南米、欧州、中東、アフリカ、日本、アジア、オーストラリアに31拠点を展開、 1,625名以上の投資プロフェッショナルを擁し、屈指の投資実績を誇る世界最大級の投資会社です。

株式会社ソラスト(旧日本医療事務センター、以下ソラスト)は、1965年に日本初の医療事務教育機関として創業し、社員数は25,000人を超え、「医療関連受託事業」をはじめ、「介護事業」、「保育事業」を含む幅広い事業を展開している会社です。

 

カーライルは2011年よりソラストへの投資を開始。2012年2月にMBOにより、当時上場していた東京証券取引所第二部からの非公開化を実施した後、企業価値の向上、業績指標の改善に向けた取り組みをスタートしました。

具体的には、以下のような施策が実行されました。

①成長を支えるための経営陣強化

カーライルは、CFO、医療事業本部長、介護事業本部長などの主要経営陣を含む外部採用を支援し、生え抜きの経営陣の業界知見と他業界でのプロフェッショナル経営の経験を融合した強力な経営チームを組成し、社外取締役としてヤンセン・ファーマ株式会社の前社長、第一三共株式会社の元取締役専務執行役員を招聘、ソラストの経営陣を成長戦略をより的確かつ迅速に実行できるチームへと強化。

②キャリアセンターの設立によるビジネスモデルの変革

従来の教育事業の柱となっていた通学の教育講座を閉鎖するとともに、2014年に採用、社内人材育成機能強化に資するキャリアセンターを新設。採用プロセスの効率化や自社にマッチした人材の採用力の向上、採用関連コスト及び離職率の低減を実現。

③介護事業の更なる成長を加速させる多数のM&A案件を実行

ソラストの介護事業の拡大を加速させるため、カーライルは2014年、株式会社ココチケアの買収の推進・実行を支援し、この案件を契機として、ソラスト内にはM&Aの実行ノウハウ、成功体験が蓄積され、以後数多くのM&Aを成功につながっています(2017年3月期には11件のM&Aを実行)。

 

また、カーライルは東名阪地域を中心とするエリア戦略の構築・実行及び施設別の業績管理強化を支援。その結果、介護事業の売上は2012年3月期から2017年3月期にかけて倍増、収益性を飛躍的に向上させることに成功しています。

④企業価値向上に資する新たな事業パートナーとの連携支援

IPO前の資本政策として、カーライルは合計45.5%の株式を大東建託株式会社、東邦ホールディングス株式会社、インフォコム株式会社の3社に資本提携という形で譲渡しました。

 

ソラストはこの資本提携により、安定的な株主構成を実現するとともに、地域包括ケアに即した介護事業の展開の強化、医療関連受託事業と介護事業におけるITを活用した生産性とサービスクオリティーの向上、さらには両事業の営業強化に資する事業パートナーを得ることができました。

これらの施策の結果、2012年3月期から2017年3月期にかけて、償却前営業利益(EBITDA)は2倍以上に増加、ROEも1.3%から26.4%へと飛躍的に改善し、ソラストは2016年6月、東京証券取引所第一部に再上場し、新たなスタートを切っています。

カーライルは、2015年12月の資本政策実施による譲渡、2016年のIPOによる売出しを経て、2017年5月には残る持分をすべて売却し、ソラストへの投資からエグジット。大きな利益を得ている。

(2)Bain Capital(ベインキャピタル)投資事例2:すかいらーくグループ

ベインキャピタルは1984年に設立、米国ボストンに本拠を置く世界的なPEファンドです。

消費財・小売から製造業・金融に至るまでのあらゆる業界で、さまざまな企業の成長ステージに応じた支援・投資を行っている。2006年には東京オフィスを開設し、国内企業への投資実績も多数あります。

株式会社すかいらーくグループ(以下、すかいらーく)は、「ガスト」や「バーミアン」「ジョナサン」などを全国展開する、ファミリーレストラン国内最大手の企業です。

 

創業以来拡大を続けていたすかいらーくも、外食産業の縮小・競争激化などの影響を受け業績が悪化し、そのような状況の中、2006年には、業績改善に向けた店舗の統廃合、新業態の想像といった抜本的事業構築を行うことを目的として、MBOにより非上場化が実施されます。

 

MBOでは、野村ホールディングスのグループ会社であるSNCインベストメント株式会社(以下、SNC)がすかいらーく株を取得し、完全子会社化。当初は創業家の横川竟氏を中心に立て直しを図ったものの、業績回復には至らず、2008年8月の臨時株主総会、取締役会により横川氏は解任され、再建はSNC主導で行われることとなります。

 

その矢先2011年3月の東日本大震災の影響を受け、今度は野村グループの経営が悪化。すかいらーくの全株式は、1600億円(うち1000億円は買収後すかいらーくが負担)でベインキャピタルの手に渡ることになります。経営再建を引き継いだベインキャピタルにより、以下のような施策を実施されました。

①顧客ニーズの精査、それをベースにした商品開発・マーケティングの強化

②出店戦略の推進

③サプライチェーンからの店舗運営モデルまでのコスト最適化

経営が回復基調に乗った2014年10月、すかいらーくは東京証券取引所第一部に再上場(持株会社・すかいらーくホールディングス)。ベインキャピタルはすかいらーく株を順次売却していき、全株式を売却しエグジットする2017年11月までに、当初の投資額を回収した上で、さらに2000億円以上のリターンを得ているとみられています。

(3)ユニゾン・キャピタル 投資事例3:あきんどスシロー

ユニゾン・キャピタル(以下、ユニゾン)は、1998年に独立系のファンドとして創業。日本におけるPEファンドのパイオニアとして業界を牽引してきた存在です。

創業以来、幅広い業種の企業に様々な形態の投資を行い、投資先企業の価値を長期的に高めるための支援を実施しています。

日本を代表する豊富な経験と卓越したノウハウが蓄積されており、産業界、金融界、省庁に渡るネットワークは業界随一です。

 

あきんどスシロー(以下、スシロー)は、二人の兄弟がそれぞれ立ち上げた寿司チェーンが合併し、1999年に誕生した会社です。

2003年には東証二部へ上場し、逆風の外食業界においても成長を続け、売上高・店舗数で業界2位につける数少ないリーディングカンパニーでした。

一方で、創業者が第一線から退いたことに加え、店舗数が増加により経営の難易度は格段に上昇し、新たな成長に向けた変革を模索する中で、2007年にスシローはユニゾンとの資本提携へと進みます。

その後2008年には両社合意のもとで、ユニゾン主導による非上場化が実施されました。

 

寿司の本物の価値をリーズナブルな価格で提供するスシローには飛躍的な成長を可能とする潜在力があると考えたユニゾンは、熟練の寿司職人が支える商品力と、ユニゾンの経営支援の組み合わせにより、成長が実現できると確信します。

「回転寿司で売上日本一」「売上1,000億円」を達成することを目標とした改革を進めていきました。

①「寿司のプロ」と「経営のプロ」が参画する強い経営チームの組成

まず取り組んだのは、寿司職人でもある社長を中心とした「寿司のプロ」と、ユニゾンが派遣した「経営のプロ」が参画する強い経営チームの組成により、さらに社内の人材に留まらず、外部のエキスパートを「チームスシロー」として取り込み、最先端のノウハウを取り入れながら、柔軟かつ迅速な企業経営を実践する企業体への進化を実現しました。

②ブランド認知と顧客満足度の向上

圧倒的な自信を持つが故に、口コミとチラシ配布のみで疎かになっていた広告宣伝を積極的に展開、2009年をブランド元年と位置づけ、創業の理念を「うまいすしを、腹一杯。」というメッセージに集約し、積極的に外部に発信することにしました。

 

それと同時に、お客様により美味しく味わって頂くための店内環境を整えるため、店舗の外装・内装を刷新。接客・サービス水準を高め、顧客満足度を向上させるためには、まずは従業員満足度の向上が必要であると考え、福利厚生・教育・育成報酬、本部による店舗の支援体制などの見直しにも着手します。

 

その成果もあってか、本格的な成長軌道に乗ったスシローは、2012年、目標としていた「回転寿司で売上日本一」・「売上高1,000億円」を達成しました。

 

変革を続ける一方で、ネタにこだわる寿司屋であり続けるための「業界平均よりも高い原価率」、セントラルキッチンに頼らない「職人技へのこだわり」、店長ひとりひとりがお客様に向き合う職人であるという「DNA」といった、スシローの原点、価値を変更することは一切行われませんでした。

それは顧客にも評価され、2010年には顧客満足度調査・飲食部門で第1位となり、名実ともに回転寿司業界のNo.1の座を獲得しています。

 

ユニゾンは2012年9月に、英系ファンドのペルミラにスシローの株式を譲渡し、エグジット。売却額は当時の為替レートで786億円。当初の投資額216億円に対し、4年間で4倍弱のリターンを獲得しています。

 

ユニゾンの手から離れた後も、スシローは回転寿司業界のNo.1を維持し続け、2014年スシローは東京証券取引所第一部に再上場(持株会社・スシローグローバルホールディングス)。

再上場時の時価総額は、2008年の上場廃止時(時価総額212億円)から、1000億円近くまで拡大しました(2018年10月末時点の時価総額は1778億円)。

5、アクティビストファンドとPEファンドの違い

 

物言う株主とも言われるアクティビストファンドも、企業の経営に関与し、企業価値の向上をめざして投資を行うという点で、PEファンドと共通しています。PEファンドとの違いは、投資対象が上場株式(パブリックエクイティ)など市場性のある商品であることです。

 

またアクティビストファンドでは、基本的に一般に公開された情報をもとに投資判断を行い、株式市場などを通じて投資先企業の株を取得します。

一方PEファンドでは、公開情報に加え、独自の調査などから入手した会社の内部情報(インサイダー情報)なども投資判断に利用される点にも違いがあります(*インサイダー情報に基づく上場企業への投資は、金融商品取引法第166条で禁止されています)。

 

ただアクティビストファンドでも、投資先上場企業が上場を維持する必要性がないと判断した場合には、MBOなどによる上場廃止を提案することもあります。

その場合には、非上場企業として企業価値の向上をめざすことになるため、実質的にはPEファンドとしての側面もあるといえます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

未上場の企業へ投資するPE投資は、不確実性も高いものの、企業価値の向上によって莫大な利益が期待できる、ハイリスク・ハイリターンな投資。また、株主として上場企業の経営に積極的に関与し、企業価値を向上させることにより利益をあげるアクティビストファンドも、PEファンドと同様、高いリターンを求める投資家にとっては魅力的な投資先となります。

 

長期的にリスクをとって運用のできるまとまった資金があり、より高いリターンを狙うのであれば、PEファンドやアクティビストファンドへの投資もひとつの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

 

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