ガバナンスの本当の意味と強化の目的とその背景

その他の投資

2019-2-24

ガバナンスを知っていますか?近年広がりを見せる「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」を理解するためにはガバナンスの理解が欠かせません。本記事ではガバナンスの意味から強化する目的を解説します。株式投資にぜひ役立ててください。

1、ガバナンスの意味とは?

(1)ガバナンスの意味

英語の「governance」に由来し、「統治・管理・支配」という意味で使われる言葉です。日本語でのガバナンスも同様で、統治や管理という意味で使われます。

(2)ガバナンスの使い方

多くの場「企業ガバナンス」、「コーポレートガバナンス」という呼び方で使われることが多いです。

 

企業ガバナンスとは企業経営の仕組みのことで、企業の収益力及び競争力の向上や不正講師の防止のために策定されます。具体的には以下の5項目です。

・株主の権利・平等性の確保

・株主以外のステークホルダーとの適切な協働

・適切な情報開示と透明性の確保

・取締役会等の責務

・株主との対話

これら項目は「企業は株主のもの」という大前提の元に策定されています。株主の利益を守るために企業ガバナンスは存在するのです。

(3)ガバナンスの類語

似た言葉に「内部統制」があります。内部統制とは、企業の健全な組織運営を管理するために設けられる施策です。

 

企業ガバナンスも組織の管理・統治という意味であり、内部統制とほぼ同じような意味と言えるでしょう。

 

2、ガバナンスとコンプライアンスの違いは?

 

ガバナンスと似た言葉で「コンプライアンス」があります。コンプライアンスとは追従、応諾、即応という意味であり、企業においては「法令順守」を示します。

 

企業にとって法令を遵守することは非常に大切です。例えばステークホルダーと呼ばれる株主や顧客、取引先などに財務会計を報告します。会社の経営状況を報告するためであり、行政が実施を義務付けている会計業務です。虚偽の情報を報告したり実施を怠ったりすることは法律違反にあたります。

 

当然、法律違反を犯した企業は罰則を受ける上に、ステークホルダーからの信頼も失います。社会的信用も低下し事業成長は見込めなくなってしまいます。最悪の場合倒産もありえます。企業にとってコンプライアンスを守ることは非常に重要なことなのです。

 

一方、ガバナンスとは上述した通り「企業統治」を指します。企業統治のためにコンプライアンスを遵守するので、意味合い的にはコンプライアンスはガバナンスに含まれます。

3、企業のガバンスの強化 求められる背景

 

近年、企業のガバナンスの強化が求められています。その背景として以下の2点があります。

(1)エージェンシー問題

エージェンシー問題とは「依頼をする側(プリンシパル)」の期待を「依頼を受ける側(エージェント)」が裏切る可能性が常に存在することを指します。このエージェンシー問題が企業においても近年頻発しているのです。

 

株式会社では企業の経営者(エージェント)が株主(プリンシパル)から資金を投資してもらい事業を経営しています。

事業の経営による利益を株主に還元することでお互いにメリットを享受できます。しかし、しばしば株主の意向に沿わない、利益を生み出さない行動をとる経営者が現れてしまいます。それが企業におけるエージェンシー問題です。

 

エージェンシー問題を防ぐために企業の経営陣に対する監視を強化するガバナンスの導入が一般化しつつあります。しかし、ガバナンスに対する日本の経営者の意識はまだまだ低いとされています。

(2)企業による不祥事の増加

バブル崩壊以降、日本企業の不祥事が増加傾向にあります。雇用問題、不良品の生産、企業間の闇取引、粉飾決算など企業規模の大小問わずニュースとして取り上げられています。

 

これら不祥事は企業価値を下げ、あらゆるステークホルダーの利益を損失させる事につながります。従業員であれば給料のカット、投資家であれば株式の減益など経済市場に大きな影響を与えてしまいます。

 

企業の不祥事が増えた要因としてビジネスのグローバル化が考えられます。国際競争力が高まり、成果主義や能力給を前提とした人事制度も増えています。今後さらにビジネスのグローバル化は加速していくため、対策を講じない限りは不祥事も増えかねない状況です。

 

そのため、経営や働き方の監視を強化するためのガバナンスの導入と実施が求められているのです。

4、コーポレート・ガバナンスの目的

 

コーポーレート・ガバナンスの目的について整理します。

(1)ステークホルダーへの還元

コーポレート・ガバナンスの目的は上でも触れたとおり、ステークホルダーとの良好な関係を築くことです。企業は健全な経営を全うし、従業員に給料を払ったり投資家に大して利益を生み出すなど継続的な社会貢献を全うするべき存在なのです。

 

上記とあわせて、エージェンシー問題はステークホルダーとの関係性が悪化する要因です。監視役となる社外取締役を設けるなど、コーポレートガバナンスの観点で処置を行うことが重要視されています。

(2)透明性のある経営

株主や投資家はもちろん、従業員にとっても会社の業績や財務状況は経営の健全性を知るための重要な情報です。

企業は経営の結果として、それらの数字を公開し、利益を生み出し社会貢献ができているか報告する義務があります。粉飾決算など、数字を隠蔽するような処置をしてしまうとステークホルダーに損失を与えてしまうばかりか、信頼も同時に失ってしまいます。

(3)株主・投資家に対する平等性

資金的な支援を行う株主・投資家に対し平等に利益を還元することは企業経営をしていく上で必須です。コーポレートガバナンスは経営の監督強化や意思決定の加速が期待できるので、企業と株主・投資家との相互利益の向上効果があります。

5、コーポレート・ガバナンスの改革で企業価値は向上するのか?

 

コーポレートガバナンスの改革で企業価値は向上するのでしょうか。実際の例を解説します。

(1)伊藤忠商事のコーポレートガバナンス

総合商社の伊藤忠商事では「豊かさを担う責任」という企業理念を基にコーポレートガバナンスに取り組んでいます。2017年には社外取締役比率を1/3以上にするなどモニタリング重視の取締役会へ移行しました。

 

結果として、伊藤忠商事の株価は2017年の初頭が1500円だったのに対し、現在は2000円をつけています。コーポレートガバナンスの強化が企業価値の向上に繋がった事例です。

(2)ツムラのコーポレートガバナンス

漢方薬品メーカーのツムラは2017年6月からコーポレートガバナンスの強化に向け「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」へ移行しました。社外取締役による業務監査の強化により執行役員の選任・解雇や報酬など適切な助言を行っています。

 

2017年年初頭には3200円だった株価がコーポレートガバナンス強化後に一時4600円をつけるなど企業価値の向上に貢献しています。

6、ガバナンスとアクティビストの関係

アイアンオックス

ガバナンスが提唱される中で、アクティビストも注目されています。オリンパスでは「物言う株主」として知られるアクティビストから社外取締役を受け入れると発表がありました。最後に、国内を代表するアクティビストであるアイアンオックス社について紹介します。

NYに本社を構えるアクティビストファンドです。アイアンオックスは、投資を通じてスチュワードシップコードの浸透やコーポレートガバナンスの向上をはかり、日本企業全体の底上げを目標としているファンドです。積極的に投資先企業に対し提言を行い、企業価値の底上げに取り組んでいます。

直近の利回りは以下となっています。

 

2016年 45.26%

2017年 27.09%

2018年11月時点 18.13%

 

通常の投資信託よりも高い利回りが魅力です。特に、市場全体が低迷する時期でもリターンを出すことができるのがアクティビストファンドの魅力です。

 

ファンドとしてだけではなく、今後はガバナンスにも介入することが多くなってくるでしょう。

まとめ

ガバナンスの意味や強化の目的について解説しました。今後株式投資を行う上でガバナンスは考慮すべきファクターです。情報を収集し、銘柄選びの参考にしてください。

関連記事一覧